原節子、号泣す
著者: 末延 芳晴
涙が表す「幸福の限界」とは!?
小津映画、世界的普遍性の謎を読み解く。
 代表作『東京物語』が、英国映画協会発行の映画雑誌「Sight & Sound」による二〇一三年アンケートで世界の映画監督が選出したナンバー1映画になるなど、小津安二郎は今なお注目を集めている映画監督である。その小津作品の中でも頂点と評されるのが紀子三部作、『晩春』『麦秋』『東京物語』だ。各作品のフィナーレに近い場面で、ヒロインを演じた女優原節子は全身を震わせて泣き崩れる。
 小津が、不滅の名を残し得たのは、この三本の映画のフィナーレで原に号泣させたからだといっても過言ではない。「泣く」という行為を切り口に、幸福の限界、幸福の共同体の喪失、という小津映画の主題と思想的本質に迫る画期的評論。

[著者情報]
末延芳晴(すえのぶ よしはる)
一九四二年東京都生まれ。文芸評論家。東京大学文学部中国文学科卒業。同大学院修士課程中退。一九七三年欧州を経て渡米。九八年まで米国で現代音楽、美術等の批評活動を行い、帰国後文芸評論に領域を広げる。『正岡子規、従軍す』(平凡社)で第二四回和辻哲郎文化賞受賞。『永井荷風の見たあめりか』(中央公論社)、『寺田寅彦 バイオリンを弾く物理学者』(平凡社)他著作多数。

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