<ヴィジュアル版>
藤田嗣治 手紙の森へ
著者: 林 洋子
奈良美智氏 推薦
「自らの言葉、他者の言葉、
赤裸々な言葉の群れに、
彼の人生がとめどなく紡ぎ出されていく。
蓄積された時間の層が、
言葉や絵となって動き出し
幻燈のように点滅し始める。
長いドラマを、ゆっくりと読むのだ。」
藤田嗣治は一九二〇年代のパリを拠点に、油彩画の本場ヨーロッパで勝負し、相応の成果を果たした最初の日本人美術家として知られます。
 画家の没後半世紀。彼が残した作品だけでなく、遺族の手元以外から、手紙の存在情報が明らかとなり、多くの書もの=日記や手紙の存在が確認され、整理公開、復刻が進んでいます。彼から手紙をあてられた人が、もしくはその遺族や関係者が守っていたのです。
 本書は生前の画家が書いた手紙をテーマとします。インクでぎっしり書かれた文字群には相手への思いのこもったイラストレーションも添えられることがしばしばで、こうした紙の上の「手しごと」を知ることが藤田の多面性の理解につながるのです。そして、いくつかの手紙は、彼の人生の「転機」の証言者となるはずです。
 収録図版百余点。描く人の手紙の森へ、ようこそ。

[著者情報]
林 洋子(はやしようこ)
美術史家。文化庁芸術文化調査官。東京大学大学院修士課程修了。パリ第一大学文学博士。東京都現代美術館学芸員、京都造形芸術大学准教授を経て現職。おもな著書に、『藤田嗣治 作品をひらくー旅・手仕事・日本』(名古屋大学出版会/二〇〇八年第三〇回サントリー学芸賞、二〇〇九年第二六回渋沢・クローデル賞ルイ・ヴィトン ジャパン特別賞ほか受賞)、『藤田嗣治 手しごとの家』『藤田嗣治 本のしごと』(集英社新書ヴィジュアル版)などがある。

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