『神と仏の道を歩く』
神仏霊場 巡拝の道 公式ガイドブック
140年の時を超えて、手を結んだ150の古社名刹
西国(近畿)の名だたる古社名刹が手を結び、「神仏和合」にもとづく新しい組織「神仏霊場会」を設立、「巡拝の道」が誕生した。参加社寺は一五〇に及ぶ。江戸時代まで盛んに行なわれた伊勢参りや熊野詣のように、神仏を同時に崇拝していた精神風土を現代に取り戻し、末永く百年千年の規模で展開する巡礼ルートだ。本書はその巡拝の道、唯一の公式ガイドブックである。解説に加えて、現代日本の鉛筆画壇の最高峰の作家たちが、全社寺の姿を描き下ろした。細密鉛筆画特有の柔らかさ、精神性が、世界遺産を抱え、美しい景観の保護も目指す「神仏霊場 巡拝の道」に彩りを添えている。
試し読み
発刊によせて
森本公誠 東大寺長老
むかし、インドに善財童子という、心の浄らかな若者がいた。貪欲と憎悪に苛まれ、策略と欺瞞で心がすさび、あげくは邪悪な道をとぼとぼと歩く、そのような世の人々を苦しみから救い出すにはどうすればよいか、と若者は心を痛めていた。そこに文殊菩薩が通りかかったので、その手立てを尋ねた。文殊は若者の志をけなげと褒め、南の方、徳雲比丘に尋ねなさいと指示した。徳雲は一つの教えを諭すと、南の方、海雲比丘に尋ねなさいと告げた。海雲は南の方、善住比丘に尋ねなさいと告げた。善住は弥伽長者に、弥伽は解脱長者にと、若者善財は指示されるまま、次々に指南の旅を重ね、仙人、婆羅門、童女、優婆夷、王様、船師、比丘尼、女性、インドの神々と女神、観音ら菩薩と、五十三人の善知識にめぐり合い、その都度心を深め、遂には確かな境地を得た。善財童子が出会った五十三人の善知識は、日本風に言えば神さま仏さまたちなのである。
いま世界中にグローバル化の波が押し寄せ、世界を隔てる壁は取り除かれて一つの経済圏へと大きなうねりが逆巻いている。人々は経済の激流に溺れまいと、日々目先の利益を求めて苦闘し、競争から脱落するのではと恐怖をおぼえている。それもこれもお金がすべてと考えることから生じる恐怖心なのであろう。日本でも例外ではない。かつて幕末から明治にかけて日本にやってきた欧米人たちが一様に感嘆した日本人の正直さは、金銭的利益のまえに霧散し、「偽装」がはびこってしまった。
幸い人間には、日常の生活とは異次元の精神の働きに感動する心性がある。そのような心を取り戻すのにはどうすればよいか。神仏の世界に身を置く者が何かお手伝いできることはないか。このたびの神仏霊場会はそのような趣旨で発足した。時は非日常の日時をつくり、この案内書を片手に、神々の鳥居・仏たちの山門をくぐり、手を合わせて神の声を聞き、仏の眼を感じてみませんか。
神仏霊場会(しんぶつれいじょうかい)
神仏霊場会は、広く宗教や思想信条を超えて、人心の平安、社会の安寧、世界の平和を祈願することを目的として西国各地の有力神社・寺院が集い、二〇〇八年三月に設立、「巡拝の道」を定めた。初代会長には東大寺・森本公誠長老が就任。特別参拝・伊勢の神宮を起点に、和歌山(八社五寺)、奈良(九社一九寺)、大阪(一〇社一四寺)、兵庫(八社七寺)、京都(一八社三四寺)、滋賀(七社一一寺)の六〇社九〇寺を巡る。山と森の自然に神仏を感じる長大な「道」である。
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