富山は日本のスウェーデン
変革する保守王国の謎を解く
著者: 井手 英策
待機児童ゼロ、結婚した女性の離職率の低さ、貧困の少なさ、公教育の水準の高さ……

日本型「北欧社会」が
保守王国で生まれていた!


富山県は県民総生産が全国30位の小自治体だが、
一人当たりの所得では6位に浮上する。

その背景にあるのは、
ワークシェアリング的な雇用環境と
女性が働きやすい仕組みだ。

さらに、公教育への高い信頼や独居老人の少なさなど、
様々な指標からはリベラルの理想が実現しているかのようだ。

しかし、北陸は個人よりも共同体の秩序を重視する
保守的な土地柄とされ、富山も例外ではない。
つまり、保守王国の中で「日本ならではの福祉社会」に向けた
うねりが起きているのだ。

10年間にわたって富山県でのフィールドワークを続けてきた
財政学者が問う、左右を架橋する一冊。

【目次】
≪序章 保守と革新、右と左を超えていくために≫
説明能力を失って久しい保革・左右という「線引き」

≪第一章 富山の「ゆたかさ」はどこから来るのか≫
女性の就労/貧困の少なさと教育水準の高さ/循環的な富山社会

≪第二章 どのように富山県の「ゆたかさ」は形づくられたのか?≫
富山県の経済的基盤/社会資本整備を必要とした歴史

≪第三章 家族のように支え合い、地域で学び、生きていく≫
富山型デイサービス/進化形態としての「あしたねの森」/
障がい者就労施設に見る富山らしさ

≪四章 危機を乗り越えるために「富山らしさ」を考える≫
日本一小さな「奇跡の村」/住民間での意思疎通のむつかしさ

≪終章 富山から透視する「歴史を動かす地域の力」≫
保守的なものから生まれる社会化、普遍化の波/
税で家族の機能を代替する/「公・共・私」のベストミックス

【著者略歴】
井手 英策(いで えいさく)
1972年、福岡県生まれ。博士(経済学)。慶應義塾大学経済学部教授。
東京大学大学院経済学研究科博士課程を単位取得退学し、日本銀行金融研究所に勤務。
その後、横浜国立大学などを経て、現職。
著書に『経済の時代の終焉』(岩波書店)、『18歳からの格差論』(東洋経済新報社)、『分断社会を終わらせる』(筑摩書房)、『財政から読みとく日本社会』(岩波書店)、共著に『大人のための社会科』(有斐閣)などがある。
2015年大佛次郎論壇賞、2016年慶應義塾賞受賞。

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