第一章 消費税というカラクリ
▼ 見えざるカラクリ
バブルには死角がある。
この先数年、日本経済がかりそめの景気回復で終わるか、50年先100年先の経済基盤を整えることができるか、今はまさにその瀬戸際にあるといえよう。というのも日本のそこかしこに日本国民が必死に働いて生みだした富を巧妙に掠めとっていく、様々な「強者のルール」が埋めこまれているからだ。
そうした見えざるカラクリのいくつかを本書ではとり上げていくつもりであるが、なかでも、もっとも憂慮している仕掛けが、この章で扱う消費税である。
消費税の存在自体は誰もが知っている。それが国民の富を損なうという危機意識を持つ人も多い。誤解をしないでほしいが、ここで言う「国民の富を損なう」とは、単に税として徴収されるその負担のことを指しているのではない。
国民から集めた税を原資にして執りおこなわれる財政には、社会のインフラを提供するような資源配分や、格差を是正して機会の平等を保障するための所得再配分という重要な機能が組みこまれている。国家の運営に税は不可欠という点に異を唱えるつもりはまったくない。
そうではなく、消費税の内実をつぶさに精査してみると、われわれの負担のうちの少なくない額が、国民に広く配分されることなく別のところに漏れてしまっていることがわかってくる。本来国民に還元されるべきものがほかに流出してしまえば、国民が疲弊するのは当然であろう。そうした不合理なお金の流れをどうしたら、国民のもとに流れるという本来の正当なスキームに戻すことができるのか。
「失われた二〇年」の間は、ひたすら結果に原因を求める議論ばかりがなされていたように思われる。「結果」として発生している経済現象に「原因」を求めても、今われわれが抱えている問題の解決にはなりえない。であるからこそ、解決にむけた知的武装をするためには、問題となっている事象の根本的な原因とその実相を見極める必要があるだろう。
強者によって仕掛けられたカラクリはじつに巧妙で、弱者のわれわれにはその実態がなかなか目につかないようになっている。ここでバブルに踊らされればそういった問題がますます死角に追いやられていく。
ほかにももっと効率的で有効な方法があるのかもしれないが、情報のかぎられたわれわれが原因の本質や核心に迫るため最短・最良の方法は、問題が発生した経緯からその起源を探る作業と考える。それにより客観的な判断も可能になる。
消費税の歴史的な起源をたどると、この税制は日本経済に安定をもたらすどころか、強者を利するために仕掛けられたカラクリであるゆえんを知ることになる。さらに掘り下げていくと、現在のグローバル経済へと帰着する戦後国際金融史にまで議論は広がりを見せる。