横山 輸入大国になったための海洋政策というのは、当然それまでの中国とは変わっていかざるを得ないでしょうね。
王 ええ。
横山 ただ、国際的な秩序からいえば、先にやった国に了解をとっていかないといけないのではないか。遅れてきたのだから平等にしろというわけにも、なかなかいかない現状がある。既存の秩序について、例えば日本のシーレーンを中国側からみたときに、それは勝手に日本がつくったもので、中国が弱かったときにそれを確立したといってもです。不満であることは間違いないのですが、不満であるからそのまま海洋政策を拡大することが当然の権利だということに対しては、国際政治の立場からいえば少し無理がある。そこはどうしても話し合いなどの穏健な形で秩序を維持しながら拡大していかなくてはならないと思います。
王 私は、中国はなるべく既成の秩序に挑戦しないようにしていると思います。かなり抑制的です。かといって、では完全に従来の秩序──アメリカや日本などの敷いた秩序のままに従っていればいいかというと、それもたぶん難しいと思います。
横山 おっしゃるように、これはなかなか難しいところですね。中国は領土を支配する目的はなくて、共同開発をしていこうということですけども、他国からは覇権だという批判が出てきます。よく中国側は覇権は絶対求めないと言っているのですが。そのギャップはいったい何から生じてくるのか。
王 ええ。これに関して私は、日本もそうですけども、中国に対してフェアプレー精神で臨む必要があると思います。同じことを他の国がやってもよくて、中国だと覇権だという議論が日本ではよくありますので。そういう意味では、平等な競争権というようなものを、ある程度素直に認めたほうがいいのではないか。先ほど横山先生は、もう既に秩序があるため、立ち後れを直そうとすれば既存の秩序に対する挑戦になってしまうとおっしゃったんですけれども、例えば今度アメリカの政策がアジア重視に再転換してくれば、それも既存の秩序に対する挑戦ということになります。しかし、日本でそれを問題にしている人は少ない。中国側はそういう面をアンフェアであると感じているわけです。
横山 中国の新聞などは最近派手な見出しが多くて、これはもう中日戦争だというような感じです。ところが、日本側も、雑誌の電車の中吊り広告などでは、もう戦争だというようなことを言っているものもあった。日本国憲法の第九条では、国際紛争を解決する手段として武力を行使してはならないとされているわけですから戦争をするわけにはいかない。もちろん中国人も日本人も戦争を望んでいるわけではないので、そこまでエスカレートしない解決策を考えなければいけません。一つには、私たちはやはり理性を働かせなくてはならない。
王 もちろんです。