福島第一原発事故は、「原子力安全神話」を壊しただけではなく、国の中央省庁と新聞・テレビというメディアの信頼を大きく低下させた。3・11に制御不能に陥った複数の原子炉で起きていた事態は、「一時は首都圏三〇〇〇万人の避難も覚悟した」(菅直人前総理)という深刻なものだったが、原発立地、周辺自治体に対しての情報提供は遅れ、放射性物質の汚染から逃れるつもりで汚染が大きな地域に住民が避難するという事態まで生んだ。二〇一二年春、野田総理の#大#おお##飯#い#原発の再稼働方針が発表されると、六〇年安保以来という多くの人々が官邸を取り囲み声を上げるようになった。
 私は区長として、世田谷区役所や区内で仕事をしているが、この一年半で社会は大きく変化していると実感する。世田谷区はいまだに人口が増えているが、日本全体はすでに人口減社会に入っている。経済が成長・拡大する時代は過去のものとなり、ゆるやかに収縮する過程に入りつつあるといっていい。
 国の政治も#閉塞#へい そく#し、酸欠状態となっている。生き生きとした議論もなければ、政策競争もない。与野党が地盤沈下する中で、破壊願望をこめて新しい勢力に期待する向きもある。代議制民主主義が大きな壁の前で立ちつくしているようにも見える。私は、地域政治の中から、地味であっても確実に再生の回路を開く道をひらこうと考えている。
 再生とは、いったん死にかけた組織や関係をていねいに修繕して、活力を与えてよみがえらせる作業のことだ。