漠然とした悩みではあるけれど、こんな問題について、思いつくままに書いてみたいと思う。僕が思いついたことだけしか書かない。なにかを調べたり、人から聞いたことも書かない。これは、そういう性質の問題で、個人的な「考え方」以外に答はないように思うからだ。
つまり、「万能薬」はない。たぶん、それくらいはわかっていると思う。どんなに有効性が認められている方法であっても、対象が人間の場合には、効く場合もあれば効かない場合もある。情報を広く集めて一般論として解説し、こういう全体傾向があると示しても、ある一人(つまりこれを読んでいる貴方)に効き目がなければ価値はない。
ならば何故書くのか、といえば、これも大勢の若者に接して僕が感じたことの一つだけれど、多くの人は答を求めているのではない、という事実だ。そんなに簡単に解決するものではない、と誰もがうすうす感じているのである。非常に賢明というか、優秀な感覚だと思う(むしろ、そういう優れた感覚の持ち主が悩むのだが)。そういう人は、大きく期待はしていないものの、少しでもヒントになるようなもの、あるいは、自分に勢いをつけてくれる言葉を見つけようとしている。自覚はないかもしれないが、客観的にそう見える。
たとえば、ぽんと背中を叩かれるだけで、気持ちが楽になるような一瞬がある。叩かれて振り返ると、笑っているのか、怒っているのか、よくわからない顔がそこにあるだけだ。大事なことは、背中を叩いたのがロボットではない、ということである。つまり、自分ではない「人間」が、自分を叩いてくれたのだ。それだけのことで、自殺を思いとどまる人もいるだろう。なんとなく、そのとき、その日は、気持ちが安らぐかもしれない。すると、ふと自分の中から湧き上がるものを感じて、もう一日だけでも、がんばってみようと思ったりできる。
結局のところ、本を読んだり、人の経験談を聞いたり、相談に乗ってもらったり、他者の生き方を観察する、というのは、背中を誰かに叩いてもらいたい、という気持ちから生じるものであって、その気持ち自体が最も大切なのではないか。その気持ちがあれば、なにかを求めている前向きな姿勢になるし、この求めること自体が、きっと生きていくために必要なものを生産するだろう、と僕は思う。