「アメリカは嫌いだ」という人もいれば、「アメリカは憧れの国」だと思う人もいる。
その是非は横におくとして、現在、アメリカは日本の同盟国であり、最も重要な国である。好きとか嫌いとかいう単純な価値判断だけですませることのできない存在だということは間違いない。
概して言えば、日本人の間では、アメリカに関する不正確な情報、不適切なイメージが蔓延し、本当の知識はまだまだ不足しているように思える。私たちが「正確な知識」と思い込んでいるものが、実は不正確なものであったり、単なるイメージであったり、幻想であったりすることもよく見られることである。
本書では、多くの日本人が知らない、しかし多くのアメリカ人にとっては常識とも言えるアメリカの一二の側面を紹介することで、その意外な姿を浮き彫りにし、アメリカとはどのような国なのか、考える材料を提供したい。
第一章「アメリカ史の裏側」では、独立宣言に始まる新興国アメリカの意外な歴史を取り上げる。
たとえば、崇高な理念を謳った「独立宣言」は有名だが、実際にその中身を読むと、当時のイギリス国王ジョージ三世に対する悪口や愚痴のオンパレードであることに違和感をもつ人も多いだろう。しかし、実はここが独立宣言の核心部分と言っても過言ではないのである。その理由は何なのか、一緒に考えていきたい。
また南北戦争は、約六二万人というアメリカ史上最大の死者を出した内戦だが、これは多くの日本人の常識と違い、奴隷解放を目的とした戦いではなかった。奴隷が解放されたのは、南北戦争の結果に過ぎないのだ。では、どうして南北戦争が起きたのか。
第二章「不可思議な政治・経済」では、超大国アメリカの、ほかの国には見られない不思議とも思える政治や経済のあり方について見ていきたい。
たとえば、その二大政党制である。現在のアメリカでは、ごく大ざっぱに言えば民主党がリベラル、共和党が保守と見られることが多い。しかし歴史を振り返れば、この立場が逆だったこともあるのだ。そもそもアメリカの二大政党は、いつ、どのようにして形成されていったのだろうか。こうした点に光を当てていきたい。
第三章は、「『アメリカの戦争』を検証する」として、アメリカという国を語る上で避けて通れない「戦争」について考えてみたい。