僕自身は一度も手にしたことはないが、小説の書き方に関する本は沢山存在するそうだ。ネットで検索したところ、書き方を具体的に論じているサイトも幾つかあった。また、小説以外にも範囲を広げると、いわゆる「文章の書き方」についてのノウハウ本は無数にある。これらも、僕は読んだことがないので詳しくは知らない。ただ、人から聞いた話では、文体や表現手法に始まり、全体の構成に至るまで、非常に具体的な項目が羅列されているらしい。
もし、こうすれば良い小説(あるいは文章)が書ける、という確固たる方法が存在するならば、それはいつの日かコンピュータにプログラムされ、ワープロが備える機能の一つになるだろう。少なくとも文体に関しては確実にそうなるはずだ。
しかし、間違えないでもらいたい。良い小説(あるいは一部の文章)とは、そのような「こうすれば書ける」では成り立たない「創作」なのである。創作とは、元来そういうものだ。個人の感性が作り上げる芸術は、すべて同じである。この個人の感性に大勢の他者が反応し、自分に有益なものだと感じれば、それが広く商品としての価値を生み出すようになり、作者が職業としてその創作を続けることができる。