こちらが日本人であることにエージェントたちは驚き、歓迎してくれたが、彼らにとっての日本人のイメージは「世界最高レベルの技術者」であり、目の前の男がそうでないと分かると急速に関心を失っていくのが彼らの表情から見て取れた。たとえ何かしらの技術があっても、平均レベルではやはり「日本人を雇う必要がない」と言われてしまうだろう。未熟練労働者が日本で職を失うと、世界のどこにも食っていける場所がないということになる。唯一の可能性として期待したのが、日本料理という文化を売りにすることだが、それすらもなかなか決め手にはならなかった。この後も、日本人だからなのか、18ビザがないからなのか、このような門前払い、もしくは全く連絡がない状態が続いた。私は「安い労働力」になることすらできないでいた。やはり18ビザを取得するしかないのだろうか。
三月下旬になって、クウェート到着当初に退去させられた部屋のインド人青年から1100KD(約四十四万円)での18ビザ取得を持ちかけられた。あるフィリピン人エージェントからは600KDを提示された。しかし、日本人だから採用されないのだとすると、18ビザを取得しても無駄に終わることになる。試してみるには高額すぎる。
冒頭のバングラデシュ人エージェントはその後も何度か電話をしてきたが、持ちかけてきたのはビザビジネスだった。