二十世紀の百年間は、印刷映像音楽など情報の複製技術、通信技術が発達し、流通する情報量が飛躍的に増えた百年間です。技術の発達は文化産業の巨大化や芸術表現の革新を生む一方で、情報の拡散を容易にし管理を難しくしました。その結果、作品などの情報をいかに囲い込むか、言いかえれば、いかに管理して収益を確保するかが関係者の大きな関心事になり、情報占有のための最強の制度である著作権の存在感が高まりました。ディジタルとネットの普及でこの傾向がさらに加速しているのが、二十一世紀になって一〇年目の現在の状況といえるでしょう。
かつて、航海術の発達は西欧にとっての「世界」を広げ、列強による世界分割がその後数百年にわたる世界の力の秩序を大きく方向づけました。同じように、過去百年間の技術の発達は情報の海を広げ、あらゆるレベルでその囲い込みや収益をめぐるせめぎあいを激化させているように見えます。世界規模のコンテンツ産業の再編やディジタル化をめぐる各種の論争もその一環と見ることができるでしょう。それは、今後の世界のパワーバランスや私たちの社会に決定的な影響を与えるかもしれません。