はじめに
「ほら、めじろがきてるぞ」
朝の食卓から、庭の梅木を眺めて主人がいいました。
「あら、ほんと?」
「仲良さそうだな」
主人が定年後のわたしたちは、一日をこんな会話ではじめることが多くなりました。
「でも、あの二人、どっちも去年と相手がちがうのよ」
いくつになっても、そうね、とはいえないのがわたしでした。
鳥でも、たとえば、はやぶさは夫婦の絆が強くて、ずっと死ぬまで相手を替えませんが、ほかの小鳥のたいていは、毎回、相手を取っ替え引っ替えするそうです。一見、相手変わらず仲むつまじく思えても、鳥は鳥でいろいろ事情があるようです。
そんな主人も逝って、もう二十年近い。こんなわたしを、ずっとつがい相手にしてくれて、ほんとうに感謝しています。
たとえ野の末、山の奥、手鍋提げて暮らすとも……。想う男となら、どんなところ、どんなときでもいっしょに暮らせる。そう思っていっしょになり、胸を焦がす想いもして、喧嘩もして、そして、ときには口惜しくて狂わんばかりの日もありました。でも、よく続いたと振り返っています。
なにが二人を結び付けてきたのでしょう。夫婦の絆ってなんなのでしょう。ずうっと考え続けて、ようやく答が見つけられそうな気がしています。それをこれからお話ししていきたいと思います。
わたしは、夫婦の諍いには、もちろん、男の方にも厳しくしますが、それ以上に女の方を叱ります。女が嫌いなのではなく、女だからこそ、もっと幸せになってほしいし、もっとうつくしく賢く生きてほしいと思うから。
そのためにも、夫婦に欠かせないいろんなルールを身につけてほしいのです。夫婦の間には、長く、身も心も許し合った仲だからこそ、互いに守っていかなければならない決まりがあって、それを守っていく方法というものがあります。格式といってもいいでしょう。
難しいことではありません。少しの知恵と、少しの心得さえあれば、誰でも、二人仲良く心地よく、暮らしていくことができるのです。
厚生労働省の統計を見ると、日本の婚姻件数は、戦後、それほど大きな変化はなく、七十万から百万件の間を行き来していて、最近は、七十五万件前後で横ばい状態が続いています。
それに対し、離婚件数には大きな変化があります。戦後、昭和四十年ぐらいまでは、年間七、八万件前後で推移していたものが、平成に入ると急激に増え、最近は二十七、八万件にものぼっています。単純に考えれば、毎年、十組が結婚する一方で、四組が離婚していることになります。
婚姻年数別に見ると、増加が大きく目立つのは、結婚二十年以上の二人の離婚です。平成十八年には、二十年以上が約三万八千件、三十年以上は約一万一千件と、ほんとうに多い。三十年ほど前の昭和五十年には、それぞれが、七千件と八百件前後だったことからすれば、たいへんな増加で、とりわけ、二十年以上の五・五倍と比べても、三十年以上のいわゆる熟年離婚は十二倍、と、その増加ぶりにびっくりしてしまいます。
粒々辛苦、酸いも甘いも噛み分けた二人。よろこびも涙も分け合ってがんばってきた二人なのに、さあ、これからというときになって、どうして御破算にしてしまうのでしょう。もったいない話です。
このわたしでさえなんとかやってこれたのです。あなたにできないはずがありません。ここが踏ん張りどころと、もう一度、あなたのあり方、これからの二人の生き方を確認してみてほしいと思います。
夫婦は、想い一つに同行二人。