近年、食品その他の偽装表示や、書類の改竄などが話題になっています。コーポレートガバナンス(企業統治)とかコンプライアンス(法令遵守)という言葉がこれだけ叫ばれていても、不祥事は跡を絶ちません。
 偽装や改竄が発覚したために、会社自体が潰れてしまうことも珍しくありません。ちょっとした目先の利益のためにやったことが、会社に決定的なダメージを与えてしまうのです。
 大手の会社では、どこもコンプライアンスの重要性を社内に通達し、内部告発ができるシステムをとっている社も多いと聞きますが、はたしてその仕組みは十分機能しているのでしょうか。
「法令を守れ」と総論で全社通達しても、それで問題解決になるとは思えません。大事なのは、各論なのです。
 たとえば、上司から「やれ」と言われていた作業が小さな偽装であり、それに気がついた現場の社員がいたとしましょう。社員がそのことを指摘したとき、その上司は、はたして正しい行動をとれるでしょうか。
「イヤな上司」「ダメ上司」であれば、程度の差はあれ、会社のことは考えているでしょうから、どんな形をとるかはともかく、問題の所在はいずれ経営層にも伝わるでしょう。しかし、人の言うことを聞く姿勢がない「バカ上司」だとしたら、どうでしょう。あるいは、上役に耳ざわりのいいことしか言わないUSB(ウルトラ・スーパー・バカ)だったら。
 発覚している問題のほとんどは、退社した元社員や匿名社員からの告発によって明らかにされたものです。いつまでたっても止まない企業の不祥事を聞くたびに、私は、その理由の一つにバカ上司の存在があると思い、それを憂慮しているのです。