まえがき

 この本はね、オレの愛と情の塊ってことでいいんじゃないの。まぁ、それを簡単に言うと「愛情写真」ですよ(笑)。写真っていうのはさ、やっぱり愛情をもって撮んないといけないのよ。ひとを見るとか、ひとのことを撮らせていただくっていうのは、そういうことなんです。
 いまの写真っていうか最近の写真って、写真にとって大切なそういうことを忘れてるんじゃない? 感情とか情感とかを断ち切って、ぱって表象っていうか表面、うわっ面のところをフラットに撮ってるっていう感じがするわけですよ、ちょっと偉そうに言うと。だから、つまんないってアタシは思ってるんだけど。
 汗かいたり、涙を流したり、ねぇ、熱っぽくなったりして撮らないと、写真は。そ〜ゆ〜のがいいんじゃない。そういうことを強調するために使う道具っていうかメカニズム、機械、それがカメラということじゃん。  
 だからさぁ、電子書籍だとか携帯電話だとか、そういうものがどんどんでてきたのは案外悪いことじゃないのよ。水分がなくなってカラカラに渇いちゃったらどういうことになるかっていうことに、いまに気づきますよ。熱っぽくっていうんじゃないけど、汗かいて夢中になることが恥ずかしいことでも格好悪いことでもないってことに、いまに気づきますって。そういうことが本当に大切だってことに。
 まぁ、アタシは70歳で北斎より少し早めだけど写狂老人Aになりますよ。卍、ね。照れてるわけじゃないけど、もう死期は近いんだから(笑)。老いた……というんじゃなくて、積極的に老いるの! 負け惜しみじゃなく、さぁ。「愛情写真」でいきますよ、どんどん。