半世紀以上にわたり漱石全集を愛読してきた姜尚中が、夏目漱石没後百年という節目の年に改めて漱石と向き合った。漱石の平易な言葉は、今なお私たちに深い智慧をもたらしてくれる。「可哀想は、惚れたという意味」「本心は知り過ぎないほうがいい」「すれ違いは避けられぬ」「みんな淋しいのだ」「病気であることが正気の証し」「嘘は必要」「一対一では、女が必勝」「頭の中がいちばん広いのだ」「片づくことなどありゃしない」等々。密かに会得したこれらの“教訓”とともに、148の文章を紹介。本書は、混迷の21世紀を生き抜くための座右の書である。
■本書より
漱石は、飽くことなく、光と豊かさ、繁栄と成長を求め続けた近代日本の絶頂期に、いちばん初めに
「憑き物」が落ちてしまった希有な作家であり、知識人だったのです。(中略)とっくに終わっているにもかかわらず、その「憑き物」が落ちない時代を生きる人々こそ、現在の私たちの姿なのかもしれません。(中略)漱石のことばに出合うとは、「余裕のある第三者」の心構えを自然に身につけていくことを、意味しているのかもしれません。
1950年生まれ。東京大学名誉教授。2014年4月より聖学院大学学長に就任。専攻は政治学・政治思想史。著書に、100万部超のベストセラー『悩む力』と『続・悩む力』のほか、『マックス・ウェーバーと近代』『オリエンタリズムの彼方へ』『ナショナリズム』『日朝関係の克服』『在日』『姜尚中の政治学入門』など。小説作品に『母―オモニ―』『心』がある。
1章 かくも「私」は孤独である 【自我】
みんな淋しいのだ
守りに入るほど弱くなる
2章 「文明」がひとを不幸にする 【文明観】
虚勢を張ってどうするのだ
3章 たかが「カネ」、されど「カネ」【金銭観】
カネが人を変える
カネがつくる縁もある
4章 「人の心」は闇である 【善悪】
漱石先生にだって、悪の心はある
人間は、まとめにくい
5章 「女」は恐い ?! 【女性観】
肉食の女が、最後に勝利する
6章 「男」は男らしくない ?! 【男性観】
男はみんな未練がましい
7章 「愛」は実らぬもの ?! 【恋愛観】
可哀想は、惚れたという意味
8章 「美」は静謐の中にあり 【審美眼】
恋愛の彫刻
9章 とにかく「この世」は複雑だ 【処世雑感】
頭の中がいちばん広いのだ
片づくことなどありゃしない
10章 それでも「生きる」 【死生観】
時の流れに従ってください
死なずに生きていらっしゃい