青春と読書「インタビュー」
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『日本人失格』 田村 淳 著
青春と読書3月号 インタビュー
『日本人失格』 田村 淳  

『日本人失格』

田村 淳 著

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芸能界の異端児が、現在のストレス社会にモノ申す!

 人気タレント、ロンドンブーツ1号2号の田村淳さんの初となる新書が刊行されました。
 ツイッターで意見を言うと炎上し、人と違うことをすると嫉妬され足を引っ張られる、こんな現在の日本社会を「息苦しい」と感じ、ご自身は好きなことをやり続けているという田村さん。テレビのみならず、イベントを企画したり、政治・社会問題に積極的に発言するなど、活躍の場は多岐にわたります。
 本書はそんな芸能界の異端児・田村さんが、今考えていることを真正面から綴った一冊です。
 初めて明かす自分史から相方・家族への思い、日本人論、そして社会への提言まで──。
 刊行にあたり、「新しいチャレンジ」だったと語る執筆秘話や本作に込めた思いを、じっくりと伺ってきました。

新書には「僕の人格そのものが誰の手も入らずにギュッと詰め込まれている」

 

田村さん1

──新書『日本人失格』が刊行されます。ちなみに田村さんは〝新書〞に関して、どのようなイメージをお持ちでしたか。

  正直に言えば、僕とは縁遠かった世界というか(笑)。なにかこう、お堅いことが書かれているというイメージが強いじゃないですか、新書って。例えば「憲法改正」とか「ISの正体とは何か」みたいな。だから、悩める現代社会に必要なことが書かれていることは間違いないんでしょうけど、いかんせん、僕には難しすぎるジャンルばかりなので、あえて近づかないようにしていたんです。というか、高尚な内容の作品ばかりだし、まさかそういうセクションから僕に何か書いてくださいってオファーが来るとは思っていませんでしたし、書けるとも思わなかったですよね。

──それでも実際に『日本人失格』を作り上げてみて、何か新しい発見がありましたか。

 作る前の段階で、とにかくまずは自分が今の社会において息苦しく思っていること、疑問に感じていること、こういうふうに意識を変えてみればストレスを感じずに生きられるのになあってことをストレートに書いてみようと思ったんです ね。ただ、そうは思っていても経験上、どこかしらで自分でブレーキをかけたり、表現を緩めてしまうだろうなとも想定していたんです。

──それはつまり……。

 僕はこれまでツイッターとかHPの生配信などで自分の思いの丈を綴ったり、伝えてきたんですけど、100%僕の意 思を反映させてきたかというと、実はそうでもなかったりするんですよ。いや、伝えなければいけないことは真摯に伝えてきたつもりです。だけど、そこには若干の気配りや、周囲の反響を気にして表現を柔らかくしてきた自分がいるんです。
 でも、驚いたことに新書では、そんなことは気にせずにどんどん書きたいことを綴れたんですよ。常日頃から頭に浮かんでいたことをまんま文字に乗せることができた。それがこんなにも気持ちいいことだとは思いませんでしたし、新しい発見でした。これまでは何かあるたびにネットを利用して自分の考えていることを発信してきましたけど、こういう形でも自分をまんま表現できるんだなって。リアルな自己発信のツールをひとつ手に入れることができたという感じです。

──なるほど。

 テレビでも結局、編集という他人の手が入ってしまうから、100%の自分を発信できているかというと、それはウソになっちゃう。もちろん、僕自身もテレビの影響力の怖さを知っていますから、それなりに言葉を選んでしまう。けど、新書は僕の人格そのものが誰の手も入らずにギュッと詰め込まれている。人格の詰め合わせみたいなもんですよ。
 そのため僕という人間を、読んでくださった方々にそのまま味わってもらえる。それはとってもワクワクすることだし、僕にとっては新しいチャレンジにもなっているし、そういう意味でも、新書に真正面から取り組んでよかったなと思って います。

──なるほど、なるほど。

 そういえば、今まで不思議だったんですよ。なぜ堀江さん(ホリエモン)があんなにたくさん本を刊行するのか。でも、今なら彼の気持ちがよくわかる。彼も書籍を通して自分の意見を自分の言葉のまま伝える作業をしたかったんだろうな、と。

──ありのままの自分(笑)を出しているせいか、とても読みやすい新書ですよね。

 ソコだけは自信があります(笑)。さっきも言ったように、新書って高尚なイメージがありますけど、『日本人失格』に限ってはそんなことないですから。小難しいことは一切、書いていないし、ハードルはめっちゃ下げてる(笑)。そのま んまの僕が表現されているだけで……。ま、こういう新書もアリって思ってもらえれば。

タレントとしての好感度より大切なこと

──それにしても、読者は驚くと思いますよ。いきなり「田村淳は芸人じゃない」と宣言していますし。世間的には田村淳を芸人だと認識している人のほうが多いですしね。

 どうしてその発言に至ったかについては、本書を読んで理解してもらいたいんですけど、僕はやっぱ、ネタを作り劇場で披露するようなことはしないんで。そういう意味で僕は芸人じゃない。ただ、これまではいちいち「僕は芸人じゃないです」って旗を掲げるのもどうかなって思っていただけ。とりあえずあなたの職業は何ですかと訊かれたときに「タレント」ですと答えるのが無難だったわけですよ。ただ、『日本人失格』を作る際に、まずは自分が何者かをはっきりさせておかないと、いろんな問題に対して、ああだこうだと主張できないと思ったんですよね。

──では、田村淳の立ち位置は「タレントとしてテレビを(生業なりわい)にして楽しいことを探している人」という認識でよいですか。

 はい。それ以上でもそれ以下でもないですし。そんなヤツが新書を通して現在のストレス社会にあれこれモノ言ってると思ってもらえると、『日本人失格』の魅力が伝わりやすいかなあ。

──その立ち位置というのは今の芸能界においては (稀有けう)な存在に映るんですが。

 そう映っているのであれば〝してやったり〞ですね。いや、本来は僕以外の「テレビに出ている人たち」も稀有な存在でなければいけないんですよ。なのに最近はやたらとテレビ局に発言をコントロールされた芸能人ばかりで残念に思っているんです。自己発信ができないような人たちばっかりだし。僕らは自己実現のためにテレビに出ているわけでね。その一番大事なところを忘れちゃっている芸能人が多すぎます。

──それはそうなんですが、(軋轢あつれき)を生まないことが長く芸能生活を続けられる要因だったりするじゃないですか。

 そう考えている人ほど、ぜひとも『日本人失格』を読んでいただきたい(笑)。芸能人ではなくても一般の方々も、ああ、自分は周囲を気にするあまり、無駄なストレスを抱え込んでいたんだな、だから、自分は息苦しさを感じていたんだな、とわかってもらえると思うんで。だったら、どうすればいいかも僕なりに提言させてもらっているので。
 なにはともあれ、僕は別にテレビ局に飼われている人間じゃないんです。そうではなく、僕は単にテレビを通して自分がやりたいことを多くの人に見て欲しいし、伝えたいと思っているだけでね。例えばトーク番組などで、このVTRについてコメントをくださいと要望されたら、場の空気を読んでそれなりの発言をしますけど、それだけだったらテレビタレントの存在って何? と思っちゃうんです。せっかく知名度を得て、街を歩けば指を差される存在でしょ。それなのに、テレビで当たり障りのない発言をしても意味ないし、僕はこれからも常に発信できるものをやっていたいし、自分が楽しめることをやり続けたい。
 タレントとしての好感度はどうでもよくて「アイツ、自己発信はちゃんとしているよね」と言われる人でありたい。

「ま、その分、批判も食らうんだろうな」

田村さん2

──でも、最近の田村さんの立ち居振る舞いがけっこう丸くなっているというか、若手時代のハチャメチャな行動や言動がなりをひそめ、番組の場の空気を調和させることを第一とした大人の司会者に変貌した感じもします。そんな田村淳も魅力はありますが、できれば、あの頃のタチの悪い狂気の田村淳で、もっともっと芸能界において稀有な存在になって欲しいんですけど。

「ああ、はい。なぜにどうしてそういう田村淳に変質したのかも『日本人失格』で十分に説明しているので(笑)、読み込んでいただければな、と。僕の目線を通して地上波のテレビ局の闇と、そこから垣間見える希望の光も書き込んでいますから。なにより僕は丸くはなっていません。BS、CS放送では〝成熟した狂気〞をお見せしていますし。
 そういえば、僕は今、関西のローカル局でダウンタウンの浜田さんと『ごぶごぶ』という番組をやらせてもらっているんですが、その収録中に浜田さんがボソッと言ってくれたんです。「お前、BSですっげえ好き勝手なことやってんな」って(笑)。それってBSスカパーの『田村淳の地上波ではダメ!絶対!』のことなんですけど、浜田さんの「好き勝手にやってんな」という言葉は、僕からすると最高の褒め言葉なんですよ。だから、僕は今でもどこかハチャメチャだし、それを活かせて楽しめる場所が今やBS、CS放送になっているんですね。そういう遊べる場所をなんとか見つけることができたというか。そこらへんの経過も『日本人失格』でこれでもか! と包み隠さず書き込んでいるので、読んでもらえればありがたいです(笑)。

──では、最後に『日本人失格』において「これは言ってやったぜ」と自信をもって言える部分はどこになります?

 そうですねえ、「年寄りより若い連中に金を渡せ」って主張かな。みんな「そうだよな」とヒザを打ってくれると思う。なんにせよ、本書はこれまでのタレント本と一線を画したものだと胸を張って言えます。タレント本ってバラエティ性を重視した作りだったりするじゃないですか。こんな日常を送っていますみたいな。ブログに毛が生えたものというか。
 いや、それはそれで楽しいんですけど、『日本人失格』はガチに田村淳の根幹が主張を持って蠢うごめいてますから、それこそありのままに(笑)。そこが圧倒的に他のタレント本との違いでしょうね。でも、ま、その分、批判も食らうんだろうな。でも、絶対に賛同してくれる人もいるだろうし。その数が多かったら、すぐに『日本人失格2』に取り掛かりますよ。今も次から次に社会に対し、言いたいことが出てきちゃってるんで(笑)。

1973年山口県生まれ。1993年からロンドンブーツ1号2号を相方の田村亮さんと組んで活動中。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。『ロンドンハーツ』(テレビ朝日)など人気バラエティ番組から『田村淳の訊きたい放題!』(TOKYOMX)のような情報番組まで多彩なジャンルの M Cを務める。著書に『35点男の立ち回り術』等。

青春と読書「本を読む」
2017年「青春と読書」3月号より

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