バイクで走る

 バイク乗りの私は、これまで何種類ものバイクに乗ってきた。完璧だと思えたのは、カワサキの「ニンジャ」。これ以来、私は車種を変えるのをやめた。一四七馬力で凄まじい音を立て、銃弾のように速いバイクは、長旅にちょうどいい。
 いろんなところに行った。気に入った場所のひとつは、キエフから北に向かったいわゆるチェルノブイリの「死のゾーン」。私の家からは、一三〇キロメートル。なぜそんなところが好きかですって? だーれもいない道をずっと走れるから。

 みんないなくなった。
 自然が芽吹いている。
 美しい木々と湖。

 トラックも軍用車も通らなくなって、まるで二〇年前と同じ状態だ─ところどころに、草や木が芽吹いていること以外は。時がたっても道路は朽ちないので、草も木も、交通が回復するまではこのままだろう……。数世紀後まで。