集英社新書WEB連載
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ガザの声を聴け!

006 日本人の思い上がり

 2日間の「ガザ・アントレプレナー・チャレンジ」の後、日本側の審査員の代表、一橋大学(当時)の米倉教授が優勝者・準優勝者を発表した。
 マジドさんが優勝。準優勝は、ガザの高層建築の階段で荷物の運搬が楽になる3輪の手押しの荷物運搬機を作成したアマルさんという女性だ。(写真3)

 結果を発表した際の会場の熱狂は、すごかった。マジドさんのGreen Cakeの仲間、アマルさんの所属するSketch Enginerringの人々は大声をあげ抱き合っていた。

 そして、なにより素晴らしかったのは参加者全員であった。コンテストの最後に集合写真を撮った。(写真4) 全員が最高の笑顔、これほど元気のでる写真を私は知らない。不可能なことは何もないのだ、と感じさせる写真だ。

 日本からは日本・ガザ・イノベーション・チャレンジの関係者が7人来た。彼らがビジネスコンテストの準備をし、実際の業務を行った。それとともに、UNRWA「ウンルワ」のガザで働いている私の同僚が受け入れ準備を行い、私は皆様の渡航のお手伝いをした。関係者は全部で9人。その関係者とコンテストに行く途中にガザの砂浜で写真を撮った。(写真5)日本・ガザ・イノベーション・チャレンジの関係者の一人はすでに会場に行っており、写真に写っているのは全部で8人だ。砂浜の8人、とでも言おうか。

 私と同僚を含めた9人がコンテストの前に持っていた共通の思いは、ガザの人々に希望を届けようだった。日本から希望を持って行こう、だった。ただ、コンテストが終わって感じたのは、我々は完全に間違っていた、ということだ。我々の完全な思い上がりであった。

 今回のコンテストを通して一番希望をもらったのは、実は我々、砂浜の8人であった。これほどの熱意と思い、そして情熱で迎えられるとは誰も思っていなかったのだ。

 実は私の様にガザで働いている関係者の間では、ガザに行くと元気が出る、元気がもらえるよね、という話がよく出る。過去10年で大きな戦争が3回、経済封鎖が11年目、失業率が4割を超え、電気・水が絶えず不足している地域に行くとなぜ元気が出るのか。そしてなぜマジドさんのような人物が生まれるのか。不思議に思われるだろう。

 実は私もそう思う。そして、その答えはいまでも見つかっていない。

第3章7回は11月17日(金)掲載予定
(2017年11月10日掲載)

清田明宏(せいた あきひろ)
作者近影

1961年福岡県生まれ。国際連合パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA=ウンルワ)の保健局長で医師。高知医科大学(現・高知大学医学部)卒業。世界保健機関(WHO)で約15年間、中東など22カ国の結核やエイズ対策に携わった。2010年から現職。中東の結核対策では、患者の服薬を直接確認する療法「DOTS」を導入し、高い治癒率を達成。その功績が認められ、第18回秩父宮妃記念結核予防国際協力功労賞を受賞した。

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