集英社新書WEB連載
文字の大きさ

ガザの声を聴け!

005 絶望の大地 希望の星

 質疑の最後に私に発言の番が回ってきた。ちょっと考え、彼女にこう言った。

「技術的なことは私にはわからない。でも私はあなたのGreen Cakeプロジェクトが大好きだ。なぜなら私はあなたが大好きだからだ」

 非常に封建的なガザで、たとえ56歳でも男性である私が、22歳の女性に、「あなたが大好きだ(I like you very much)」と皆の前で言う。言う前、大丈夫かなとも思ったが、私の正直な気持ちだったので、そのまま伝えた。マジドさんを始め、会場の皆が大笑いをしてくれた。

 私の仕事は保健・医療という専門性の高い仕事だ。専門的な知識・技術が求められることが多く、それがないと仕事が進まない。人を採用する際もその専門性の判断は大事だ。ただ、本当に大事なのは、専門的知識・技術の高さではないのだ。そんなものは勉強すれば良いのだ。

 大事なのはその人がどういう人物かだ。物をどう考え、どう説明するか、質問にどう答え、どう話を繋いでいくか、大げさに言えば人格のすべてを見る。私の非常に尊敬する世界保健機関の大先輩が「仕事は人格でするものだ」と言っていたのだが、私もそう思う。

 マジドさんのような人は、絶望の大地における希望の星なのだ。
 彼女は、今年(2017年)3月、日本・ガザ・イノベーション・チャレンジの招待で来日した。日本の若者の前で、さらに力強く話をし、多くの共感と感動を生んでいた。

 彼女は、今(2017年8月)は、奨学金を得て、アメリカのボストンで勉強をしている。
余談だが、先日、日本のある人にマジドさんのことを伝えようと、パソコンでローマ字で「ma-ji-do」と入力し日本語変換すると「本気度」と表示された。え!? と思うとともに、これは偶然ではないと、その人に話しお互い大笑いした。マジドさん、本当にありがとう。

第3章6回は11月10日(金)掲載予定
(2017年11月03日掲載)

清田明宏(せいた あきひろ)
作者近影

1961年福岡県生まれ。国際連合パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA=ウンルワ)の保健局長で医師。高知医科大学(現・高知大学医学部)卒業。世界保健機関(WHO)で約15年間、中東など22カ国の結核やエイズ対策に携わった。2010年から現職。中東の結核対策では、患者の服薬を直接確認する療法「DOTS」を導入し、高い治癒率を達成。その功績が認められ、第18回秩父宮妃記念結核予防国際協力功労賞を受賞した。

ページトップへ