集英社新書WEB連載
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ガザの声を聴け!

第3章 絶望の地 希望の星

001 ガザで起業支援?

 2015年の11月、業務で帰国した際、以前からお世話になっている日本人の20代起業家の方から連絡を頂いた。彼は色々な国で起業の支援もしており、いつもアッと驚くアイディアを持っている。彼の話を聞いているとこちらも刺激されるため、もちろんその日の夜に直ぐ会った。彼は友人とやって来た。その友人は、日本とパレスチナ、イスラエルの若者を繋ぐ活動を始めたという人だった。

 彼らはこう言った。
「ガザの若い人の起業の支援をしたい」

 これには驚いた。と言うのも、ガザは、経済が崩壊し、失業率も高い(特に若い人では60%にもおよぶ)。2015年末にUNRWA「ウンルワ」が約200人の新規の教員の募集をガザでしたのだが、それに対し、なんと2万7000人の教員資格を持つ人から応募があった。前回も書いたように、経済封鎖が続き人や物の移動が著しく制限され、中にはそうした状況を「世界最大の監獄」と呼ぶ人もいる。
そのガザで起業支援――。

 話を聞いてみた。
 彼らはソマリア、タンザニア等のアフリカの国ですでに「起業家支援」を始めたという。ソマリアでは、女性客を対象にした女性の運転手によるピンクタクシーという起業を支援した。確かに、ソマリアの社会習慣を考えると、男性運転手のタクシーに女性一人では乗りにくいだろう。現地のニーズに合い、なおかつ斬新だ。

 彼らの熱意は素晴らしかった。もちろん熱意だけで世の中は動かないし、起業できるほど、甘くはないはずだ。ただ、熱意がなければ世の中は絶対動かない。そして、熱意は伝播する。人間が本当の意味で感動するのは、人間の心だけである。その人間の心を動かすには熱意が必要だ。

「世界に通用する人材をガザで育てよう、その手助けをしよう」と私が言うと、その場で全員ガッツポーズをした。

第3章2回は10月13日(金)掲載予定
(2017年10月10日掲載)

清田明宏(せいた あきひろ)
作者近影

1961年福岡県生まれ。国際連合パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA=ウンルワ)の保健局長で医師。高知医科大学(現・高知大学医学部)卒業。世界保健機関(WHO)で約15年間、中東など22カ国の結核やエイズ対策に携わった。2010年から現職。中東の結核対策では、患者の服薬を直接確認する療法「DOTS」を導入し、高い治癒率を達成。その功績が認められ、第18回秩父宮妃記念結核予防国際協力功労賞を受賞した。

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