集英社新書
カルチュアどんぶり
作者近影 金平茂紀(かねひら しげのり)
TBS「報道特集」キャスター。1953年北海道生まれ。1977年TBS入社。報道局社会部記者、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長及びTBSインターナショナル副社長等を歴任。2004年度「ボーン・上田記念国際記者賞」受賞。著書に『テレビニュースは終わらない』『世紀末モスクワを行く』『電視的』『二十三時的』『ホワイトハウスから徒歩5分』『報道再生ーグーグルとメディア崩壊』(河内孝氏との共著)他。


13-5(1) 平和に生きる権利

ジンタらムータとリクルマイ(筆者撮影)ジンタらムータとリクルマイ(筆者撮影)


 ヴィクトル・ハラの「平和に生きる権利」が、大熊ワタル率いるジンタらムータとレゲエ歌手のリクルマイのボーカルでリリースされた。それを祝ってのパーティーが開かれたので足を運んだ。久しぶりにみたジンタらムータのメンバーも随分と若返ったように思ったけれど、熱い心意気は全く変わっていない。「Amazing Grace」から始まり、グレゴリア聖歌や、エミール・クストリッツァもやっている「Aratigana」、それに添田亜蝉坊の「ああ金の世や」「無茶苦茶節」と続き、オリジナルの「道化師の週末」と来て、その曲「平和に生きる権利」を聴く。この曲はこころに沁みる。そして「不屈の民」「のんき節」には、第二部の主役リクルマイが加わってにぎやかに第一部が終了。元気がついた。今回のCDのカバー画を担当したヤギヤスオが、幕間にいくつかの音源をDJ風に流していたが、とてもいいセンスだった。ステージが終わってから、八木さんと話をして納得したが、本当は一番最後にJAGATARAの「つながった世界」を聴かせたかったんだそうだが、散逸して出来ず仕舞いだったとか。リクルマイという人のステージはこれが初めてみるのだったが、実にパワフルな女性だ。「平和に生きる権利」のボーカル・バージョンは歌詞がよくて、ストレートにこころに伝わってくる。
 聴いていて、この曲こそが「現下の日本の情況」に拮抗する歌なのだと実感した。「現下の日本の情況」とは以下のようなことを言う。憲法を変えて「平和に生きる権利」が蹂躙されようとしているのに、抵抗のちからがまとまらない現下の情況。戦後68年を経ても沖縄を「植民地」扱いし、本土並みに「平和に生きる権利」を沖縄の人々には保証しない日本本土の情況。日本の国に暮らす外国人たちや少数者、何らかの理由によって生活が困難となっている弱い人々を、物理的、法的、精神的に「排除」して、彼らの「平和に生きる権利」など認めてたまるものかと息巻く人々が増えている情況。今もなお、コントロールできない福島第一原発の過酷事故の現状を忘却して、原発災害の住民たちの「平和に生きる権利」などなかったことにして、あろうことか原発再稼働へと踏み出そうとしている日本の情況。大震災の復興がままならないのに、経済指標の上昇・増大という目標が「平和に生きる権利」を押しのけようとしている情況。
 歌は力強いものだと信じたい。


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