集英社新書
カルチュアどんぶり
作者近影 金平茂紀(かねひら しげのり)
TBS「報道特集」キャスター。1953年北海道生まれ。1977年TBS入社。報道局社会部記者、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長及びTBSインターナショナル副社長等を歴任。2004年度「ボーン・上田記念国際記者賞」受賞。著書に『テレビニュースは終わらない』『世紀末モスクワを行く』『電視的』『二十三時的』『ホワイトハウスから徒歩5分』『報道再生ーグーグルとメディア崩壊』(河内孝氏との共著)他。


12-12(4) ジャンル無視2012年ベスト10

(Steve Reich『Drumming』(東京オペラシティ)のカーテンコール 撮影筆者)
Steve Reich『Drumming』(東京オペラシティ)のカーテンコール
撮影筆者

 何だかあっという間に2012年が過ぎていく。親族や親しい知人、飼いネコにも死なれて全く落ち込むことが多かった1年だったです、正直に言いますが。今年は本もろくに読めなかったし、映画もあんまりみなかったですね。音楽や舞台はとにかく時間をひねり出してでも出かけましたが、それでも例年に比べると少ない。そんな中での今年のカルチュアどんぶり的総括。
 ▼ピナ・バウシュ&ブッパタール舞踏団の『石ころの苔のようにcomo el musguito en la piedra, ay si, si, si (Like moss on a stone)』。この舞踏団の舞台が今年見たあらゆるもののなかのベストだったのかなと思う。死後3年。ピナの魂は生きていることが確認できた。▼イタリアのドキュメンタリー映画『誰も知らない基地のこと』。海外の米軍基地がどのような存在として地元住民に映っているのか。これは沖縄の基地問題を考える時に「日本という国がどれほどのものなのか」のひとつの解を与えてくれる。▼国際フォーラムで開催された今年のLa Folle Journee au Japonにおける「渋さ知らず」のコンサート。自由と躍動と逸脱。▼井上ひさし生誕77フェスティバルの連続8公演。今年の演劇で一番楽しみにしていたのがこれだった。発見も再確認も大いにあった。『薮原検校』も『日の浦姫』も『11匹の猫』もよかったなあ。▼たまたま海外への航空便の機内でみたピーター・ウィア監督の映画『Dead Poet Society』と邦画『桐島、部活やめるってよ』。同じ学校を扱う映画でこれほどの隔たり。前者のまっすぐさは今の日本が失ってしまった最たるものだ。でも両方とも面白いなあ。▼試写会でみた映画『おだやかな日常』。原発をテーマにした劇映画は他にもいくつかあったけれど、僕はこの映画に一番深く共感した。▼笠井叡&麿赤児の初共演『ハヤサスラヒメ=速佐須良姫』(世田谷パブリックシアター)。日本の舞踏の歴史上の事件だったのではないか。▼Steve Reich『Drumming』(東京オペラシティ) ミニマル派の創始者の現役の姿を間近にみた興奮。▼坂本龍一@ブルーノート。教授もいい意味で大人になったのかな。落ち着いて聴くことのできた夜だった。そして決然たるものをもらった気がした。▼『黒猫堂商店の一夜』(藤宮史 青林工藝舎)。今年入手して読んだ本の中で最も愛着を覚えた本。木版版画漫画の作品集。すばらしい。番外で、もうみっつだけ。▼三木卓『K』(講談社)。人が人を愛することの意味をあられもなくみつめた作品。こたえた。身に沁みた。▼高見順賞授賞式における高橋睦郎ら詩人たちのことば(3月16日)。昨年度の金時鐘と今年度の辺見庸の受賞の意味を〈3・11〉をはさんで自らに問うた誠実さに打たれた。▼黒川創『いつか、この世界で起こっていたこと』(新潮社)。フクシマ後に書かれた小説のなかで最も心に残っている。あ、平石貴樹の旧作『虹のカマクーラ』もあったっけ。


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