集英社新書
カルチュアどんぶり
作者近影 金平茂紀(かねひら しげのり)
TBS「報道特集」キャスター。1953年北海道生まれ。1977年TBS入社。報道局社会部記者、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長及びTBSインターナショナル副社長等を歴任。2004年度「ボーン・上田記念国際記者賞」受賞。著書に『テレビニュースは終わらない』『世紀末モスクワを行く』『電視的』『二十三時的』『ホワイトハウスから徒歩5分』『報道再生ーグーグルとメディア崩壊』(河内孝氏との共著)他。


12-06(2) ロマノフスキーには品位が漂う

パンフレット(筆者撮影)パンフレット(筆者撮影)

 似ている。確かに雰囲気が似ているなあ。映画『戦場のピアニスト』で主役を演じたエイドリアン・ブロディに。そんなことを思いながらアレクサンダー・ロマノフスキーのソロ演奏を聴きだしたら、どんどん引き込まれていった。特にブラームスの「パガニーニの主題による変奏曲 作品35」は素晴らしかった。技巧とか言う以前に、品位・品格のようのものを感じる。技巧ばかりが前面に出てくるアクロバティックな演奏者タイプとは明らかに違うように思う。この日の演奏は、ハイドンから始まって、ブラームス→ラフマニノフへと流れ、観客のリクエストにこたえて、ショパンのノクターン、スクリャービン、バッハの小曲など計3曲を披露した。ロマノフスキーは1984年のウクライナ生まれだが、このところロシアの若手クラシック演奏家の演奏を聴く機会がいくつかあった。以前にこの欄で記した「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」もそういう機会だったが、それより少し前だと、チャイコフスキー国際コンクール優勝者のガラ・コンサートというのもあった。イケメンでただいま人気絶頂、日本で「追っかけ」もいるピアニスト、例のダニール・トリフォーノフとか、バイオリニストのセルゲイ・ドガージンとかがモスクワ交響楽団とともに出ていたが、その時の演奏会では、チェロのナレク・アフナジャリャンという人が突出して素晴らしかったように感じた。アフナジャリャンは1988年、アルメニアの生まれ。ロストロポーヴィチ財団から奨学金を得て研鑽を積み、2011年のチャイコフスキー国際コンクールで優勝した人物だという。聴いてぶったまげた。独創的と言うかとてもエネルギッシュ。アンコール曲は何という曲か知らないが、ピッキングだけのまるでジャズを聴いているような広がりのある豊かな曲だった。でも女性が多い聴衆はやっぱりトリフォーノフの方に行っちゃうんだろうかな。先のロマノフスキーは1984年生まれ、チャイコフスキー・ガラの出演者3人は、1991年、1988年、1988年といったいずれもソビエト連邦末期の生まれである。あの経済がひっ迫していた頃に生まれ、よくもこれほど順調に音楽の才能を育んできたものだと驚かざるを得ない。なぜロシアではこういう音楽の才能が生き残っているのだろうか。いやいや即断はよくない。これから10年後くらいのロシアのクラシック音楽界が一体どのような活況を呈しているのか、本当にみてみたいものだが、その頃、まだプーチンの治世が続いていたりするんだろうか。

 


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