集英社新書
カルチュアどんぶり
作者近影 金平茂紀(かねひら しげのり)
TBS「報道特集」キャスター。1953年北海道生まれ。1977年TBS入社。報道局社会部記者、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長及びTBSインターナショナル副社長等を歴任。2004年度「ボーン・上田記念国際記者賞」受賞。著書に『テレビニュースは終わらない』『世紀末モスクワを行く』『電視的』『二十三時的』『ホワイトハウスから徒歩5分』『報道再生ーグーグルとメディア崩壊』(河内孝氏との共著)他。


12-05(1) チェコの画家イジー・ヴォトゥルバに会う

ヴォトゥルバ夫妻(国際フォーラムにて。筆者撮影)ヴォトゥルバ夫妻(国際フォーラムにて。筆者撮影)

 チェコのプラハはヨーロッパのなかでも一番好きな都市だ。石畳の街並みが美しい。そして今でもプラハはヨーロッパの美術の中心地でもある。もう随分前のことだが、プラハの街中を散策しながら画廊を見て回ったら、好みの絵があまりにもたくさんあって、時間がいくらあっても足りないくらいだった。そのプラハ生まれ(1946年)の画家・イラストレーターのイジー・ヴォトゥルバの作品にめぐりあったのはもう7〜8年くらい前のことだろう。ヴォトゥルバの手になるプラハの街をあしらったイラストを表紙にしたリングノートがとても気に入って、仕事で使うメモ帳にたびたび愛用していた(今でも愛用している)。それらのイラストはプラハの街並みで踊っているモーツァルトであったり、社交ダンスをするシューベルトだったり、散歩するカフカだったり、とにかく夢想に満ちた作品なのだった。それで殺伐とした仕事が多いなか、その素敵なリングノートに気に入ったことどもを書きつけたりしていた。たまたま日本の代理人・新倉さんと知り合うことができて、リングノートをいただいたりして大事にとっていた。NYに渡ってからもそれらのノートを大事に使っていた。そのヴォトゥルバさんが来日しているというので、先の新倉さんのご好意でお会いする機会をいただいた。奥さんのローラさんと現れたヴォトゥルバさんは今年65歳とは思えない若々しい人だった。日本へ来たのはこれで9度目だと言うほどの親日家で、今年の1、2月に東京のチェコ・センターで開かれた展覧会「Things will never be the same.」では、日本の若手イラストレーター、デザイナーとの3人展を試みた。中村佑介、高木綾子とのコラボはなかなか斬新だった。ヨーロッパの美術界での日本のアニメ、イラストへの関心は相当なもので、そこに日本の木版画の伝統や浮世絵の影響などを読み込む傾向さえある。ヴォトゥルバさんの今回の来日は、「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン(熱狂の日)」音楽祭のビジュアルイメージやグッズのイラストを担当したからだが、メインテーマの「聖なるロシア音楽」とうまく調和していて大成功だったのではないか。夢を与えてくれるイラストのあしらわれたポシェットやトートバッグもかわいらしい。さらには靴や室内プールのデザインも手がけていると話していた。「2人のムラカミの大ファンだ。海辺のカフカも読んだよ」。ヴォトゥルバさんはそう言っていた。ムラカミ×2=村上春樹+村上隆だが、これからは日本のイメージはこういう国境を容易に越える人々によって形成されていくのかもしれない。

 


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