集英社新書
カルチュアどんぶり
作者近影 金平茂紀(かねひら しげのり)
TBS「報道特集」キャスター。1953年北海道生まれ。1977年TBS入社。報道局社会部記者、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長及びTBSインターナショナル副社長等を歴任。2004年度「ボーン・上田記念国際記者賞」受賞。著書に『テレビニュースは終わらない』『世紀末モスクワを行く』『電視的』『二十三時的』『ホワイトハウスから徒歩5分』『報道再生ーグーグルとメディア崩壊』(河内孝氏との共著)他。


12-03(1) 石川真生の『日の丸を視る目』を視にいく

石川さんの『日の丸』作品のポストカードより(撮影筆者)石川さんの『日の丸』作品のポストカードより(撮影筆者)

 生き方の深さが違うのだと思う。アメリカ軍という存在とどう向き合っていくか。沖縄在住の写真家・石川真生と初めて会ったのはいつごろだったかはあまり記憶にないのだが、80年代の終わりころか、あるいは米兵による少女暴行事件があった95年ころか、とにかく何だかひどくおっかない思いをしたような記憶だけがひっかかっている。米軍基地を撮る写真家というと、「反米」というレッテルを貼りたがる人がいるけれど、石川真生はそのような運動家なんかではない。アメリカ兵と何年もともに暮らしていたし、反基地ではあっても反米兵ではない。ベトナム戦争など戦地での任務を終えて沖縄に「帰ってくる」米兵たちは可哀そうだと思ったことさえあると正直に言う。石川が撮った米兵たちの顔は表情がとても豊かだ。敵をおそるおそる窃視するような眼差しではない。一緒に共に生きるべき人間。黒人兵が多いのも必然だ。石川が撃つのは、訳知り顔で「沖縄は可哀そうな被害者=悪いのは米帝国主義」というスローガンを唱える本土の運動家といった輩だ。
 沖縄が強いられている困難の根源にあるのは、日米関係ではなく、実は日沖関係なのだ。日本政府が、日本の官僚が、日本の政党が、日本の労働組合が、日本の企業が、日本のメディアが、日本の平和運動が、日本の教育が、沖縄をないがしろにして差別してきたという現実。
 沖縄は今年復帰40周年を迎える。本当に「本土」に復帰したのか? 復帰以前は日本国憲法が適用されていなかった。だから本土から沖縄へゆくにはパスポートのような書類が必要だった。今や沖縄は本土に復帰した。日本国憲法下で平和に暮らす権利を、他の都道府県と同じように保障されているだろうか? 『日の丸を視る目』。日の丸という旗に託して、石川はそのことを日本人に、沖縄人に、世界の人々に問いかけている。
 先日、鈴木邦男とともにテレビ番組に出演していた石川は、東日本大震災以降、この国に蔓延している〈みんな大変なんだから、いろんな要求を自粛しよう〉という空気が沖縄にまでも及んできていることに怒りを露わにしていた。〈沖縄も被災地と同じようにたくさん死んだら初めて気づかれるわけ?〉
 願わくば、この5月15日に開催されるであろう復帰40周年の記念式典が、もやーっとした祝賀セレモニーに終わることなく、沖縄の現状を直視して、日本政府、およびアメリカ軍にきちんとものを申す機会にならんことを。それを考えるのは、お前らマスメディアだろ、と石川に警告されているような気がするけれど。

 


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