集英社新書
カルチュアどんぶり
作者近影 金平茂紀(かねひら しげのり)
TBS「報道特集」キャスター。1953年北海道生まれ。1977年TBS入社。報道局社会部記者、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長及びTBSインターナショナル副社長等を歴任。2004年度「ボーン・上田記念国際記者賞」受賞。著書に『テレビニュースは終わらない』『世紀末モスクワを行く』『電視的』『二十三時的』『ホワイトハウスから徒歩5分』『報道再生ーグーグルとメディア崩壊』(河内孝氏との共著)他。


11-11 (3) 同一動作の〈反復〉の不条理

ポーランドの「テアトル・シネマ」(筆者撮影)ポーランドの「テアトル・シネマ」(筆者撮影)

 僕たちの人生の不条理は〈反復〉にあるのかもしれない。〈反復〉のなかで僕らは生きている。ポーランドの劇団テアトル・シネマと日本の劇団解体社との共同プロジェクト「ポストヒューマンシアター」をみた(11月11日、森下スタジオC)。ポーランドの前衛演劇と言えば、かつてタデウシュ・カントールの舞台があった。『死の教室』の衝撃は今も忘れられない。僕がまだ若かったころ、パルコ劇場で観たカントール率いるCRICOT2の『くたばれ!芸術家』も、何ということをする人たちなんだと思った舞台だった。巨大な木馬のオブジェ。テアトル・シネマの『Hotel Dieu/ホテル・デュ(神)』は、そのカントールの延長線上で見ている思いがした。不安、不満足、不条理、不能、不具合、不幸……。負の記号を背負った僕らの感情はどのように表現され得るのか。そのひとつの方法が、日常的空間のなかでの集団による同一動作の〈反復〉。ピナ・バウシュの『コンタクトホーフ』や『カフェ・ミューラー』にも頻出する、あの〈反復〉という強迫観念の表現。チャップリンの『モダン・タイムズ』のなかの名曲『Titina』に合わせて反復される同一動作は、『第三の男』に合わせて繰り広げられたブッパタール舞踏団のステージを想起させた。確かに〈日々の出来事や身振りが軍事教練に似ている〉ことを僕らは見出す。あの場にいたポーランド男性たちの体からは、軍事教練に励む兵士たちの強烈なチーズの匂いがしてくるような気さえした。
 付記しておけば、劇団解体社が『最終生活』のなかで採用していたテクストに接してみると、そのあまりのレアさにたじろぐ。おそらく、あれらのテクストは、深沢七郎の『風流無譚』からのもの、東海村JCO臨界事故で被ばく死を遂げた作業員の独白、そしてカダフィ殺害後にネット上で発表された「リビアで消滅するであろう16のことがら」から成り立っていたのだと思う。カダフィへのオマージュは、この日本においては、99%確実に拒否されてしまう現実を踏まえれば、異化効果を醸し出すことさえ困難かもしれない。強烈な相矛盾する反応が自分の中に生起してくるのを感じた。ともあれ、このような共同プロジェクトが辛うじて日本の演劇界にまだ生き残っていることに、かすかな「自由」を見出す。


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